8月半ばから9月はじめの松本は、
ちょっと“よそいき”な感じになる。

毎年恒例のクラシック音楽祭
「サイトウキネン・フェスティバル」があるからだ。

街を歩けば、
「SAITO KINEN FESTIVAL MATSUMOTO」と書かれた
青と緑のペナントが風に揺れている。

テレビのローカルニュースでは、
リハーサルやイベントの様子が流れ、
総監督である小澤征爾氏が映し出される。

あの“世界のオザワ”だ。
氏は毎年、松本に1か月も滞在。
そして総監督の任務をこなす。


もちろん楽団員も、練習やリハーサルを行うべく、
松本に滞在しつづける。

楽団のメンバーは、毎年セレクトされ、
国内各地、そして海外からも松本にやってくる。
晩夏の松本は“楽都”となり、
音楽関係の人口密度が高くなる。

喫茶店に入る。
となりのテーブルで、悠々と読書する女性。
「楽団員かしら?」と思っていたら、案の定、
数日後、舞台の上でホルンを吹いていたりする。


堪能しました。サイトウキネン。

コンサート、素晴らしかった。
ホールの座席で、何度も身震いした。


でも。それだけではなくて。


コンサート当日、夕方。
アルプスの山々が切り絵のようなシルエットになり、
会場に夕暮れがじんわりとやってくる。

会場の駐車場には、各地からのナンバープレート。
名古屋、大阪、埼玉、栃木……秋田ナンバーなんてのも。

温泉宿の送迎バスから降りてくる
老年のクラシックファンのいでたち。

近所から歩いてやってくる
地元の若いカップル。

ホールのエントランスは、
静かではあるけど、幸せ感を含んだ、
独特の華やいだ雰囲気がただよう。

会場を進むと、ボランティアの皆さんが。
チケットもぎり、会場案内、クロークなど、
無償の行為とは思えぬ、
礼儀正しい、笑顔のオペレーション。
快適を通り越して、感動すら覚える。

だから、サイトウキネンっていいんだ。
街があって、山があって、音楽がある。


……と。
webで書き放題とはいえ、長文もどうか?
なので、このへんで。

サイトウキネンが終われば、
そこここに秋が舞い降りてきます。


■ 2008/09/24 ■



archives
Illustration:Motoko Umeda
2008年4月〜2011年3月 工房創成期の軌跡
日記アーカイブス

宵待ち
サイトウキネン